会社の倒産に際し当事務所が経営者にお伝えしたい10箇条

はじめに

当事務所は創業約50年の歴史を有しますが、設立当初から中小企業の経営安定こそ、わが国の経済的発展やそこに働く方々の幸せの源泉であることを固く信じ、中小企業経営者の皆様方の相談に応じてきました。

その中で、「売上げが減少し、資金繰りがうまくいかない。」「約束手形の期日が迫っているのに決済資金が用意できない。」「取引先に支払うお金が不足して迷惑をかけそうだ。」との相談も数多くありました。

この場合、残念なことに会社破産の申立てをお勧めすることも数多くありました。

多くの会社経営者は「これで私の人生は終りだ。」と悲嘆にくれることが現実です。

自分が精魂こめて設立し経営にあたった会社が破産という事態に直面するのですから、そのように考えることはもっともです。

しかし、会社経営は景気の動向や社会の経済動向に影響されがちですので、今まで順調にいっていた会社経営もちょっとしたことでつまずくことも多くあります。

この場合、会社経営者を救済するために国が設けた制度が会社の破産です。

この会社の破産制度を利用することによって、会社経営者ご自身の経済的な立ち直りもできるはずでありますから、悲観ばかりする必要は全くありません。

多くの中小企業を経営する皆様が、毎日、身を粉にして働いている姿を当事務所はよくみかけています。

このような方々こそ、会社の破産制度を利用し、あわせて、ご自身の人生の再スタートを図って、新たなことに再チャレンジしてもらいたいと思います。

そこで、中小企業経営者の皆様方から、ここ数十年の間に当事務所に寄せられた破産についての疑問や誤解を厳選、回答することにより、皆様方の不安をいくらかでも解消したいと思います。

お伝えしたい10箇条

会社が破産すれば自分の人生が台無しになってしまうのでは。

そのように考える方が多くあり、なかには自殺をしてしまった経営者もいます。

しかし、そのように後ろ向きに考えることはありません。破産手続の終了により、長らく経営してきた会社は消滅してしまいますが、会社がその地域で有用な働きをし、従業員の生活を支え、経済社会の発展に寄与してきた実績まで消えてしまうわけではありません。

ましてや、会社経営者は、たとえ会社が消滅したとしても、今後もこの社会で生活していかなければなりません。

会社が破産しても、会社経営者が会社の経営を通じ、社会や人々のために貢献してきた事実はなくなりません。

会社の破産という不幸な事実を糧にして、人生の再スタートをきり、その後の生活を立派に送っている経営者も数多くいます。

あなたの人生は台無しになりませんし、当事務所もあなたの人生の再スタートが円滑にできますよう最大限の応援を致しますのでご安心下さい。

取引先等の債権者につきまとわれることはありませんか。

取引先等の迷惑をかけた債権者が執拗に会社経営者の会社事務所や自宅を訪れ、会社経営者を追及することはありますが、それもまもなくやみます。

会社経営者が、従来、誠実に会社経営をし、破産の申立てにあたっても何ら不正等がない場合には、苦情程度はあるものの、会社経営者を必要以上に責める債権者はほとんどありませんのでご安心下さい。

当事務所に会社破産の申立てのご依頼をいただいた場合、申立て前やそれと同時に債権者の方々に受任通知を書面にて送付し、その中で「当事務所が窓口になりますので、今後は債務者に直接連絡したり、電話をしたりしないで下さい。」と記載しますので、ほとんどの債権者はこれに従います。

もし、会社経営者を脅迫したり、追いかけたりする者がいれば、たとえ債権者だとしても、違法になりますので、当事務所が厳正に対処します。

以上のとおりですので、会社経営者が必要以上に債権者を恐れることはありませんし、良識的な債権者も数多くおり、ほとんどすべての債権者が裁判所の破産手続に従って行動していることが現実の姿です。

会社の破産申立てに伴い会社経営者自身も自己破産の申立てをしなければならないのですか。

ほとんどの会社経営者は金融機関に対する連帯保証をしていますので、会社の破産申立てと同時に会社経営者自身の自己破産の申立てをすることが普通です。

さらに、会社経営者は経営資金が手許にない場合、カードローンを利用してカード会社から借金して、それを会社の経営資金とすることが多いのですので、この借金も整理しなければならず、自己破産の申立てをして、免責決定を得て負債のない状態で再出発をすることになります。

但し、今は会社の破産=会社経営者の破産の時代は終ったとされ、経営者保護に関するガイドライン研究会が平成25年12月に制定した「経営者保証に関するガイドライン」の活用により、会社経営者の自己破産の申立てを回避することも可能になりました。

「経営者保証ガイドライン」が対象とする債権は、銀行が有する債権ということになっていますが、リース債権者等の銀行以外の債権者も一定の場合には対象債権者にすることができます。

その他の債権は対象となっていませんが、個別に合意すれば、「経営者保証ガイドライン」を活用することも可能になります。

自宅や自動車等の財産を残すことができますか。

自宅については、それが会社の資産であれば破産管財人により換価処分がされますので残すことはできません。

会社経営者の資産である場合、会社の経営者が銀行等の連帯保証をしていることがほとんどですので、「経営者保証に関するガイドライン」の適用の場合を除いては残すことはできません。

自宅が会社経営者以外の家族の名義であれば、会社債務の保証をしていない限り残すことができます。

もっとも、銀行等の抵当権者との話しあいによって家族や親戚のどなたが買取れば自宅に居住し続けることが可能となり、そのような方々も現にいらっしゃいます。

自動車につきましても、自宅と同様、会社の所有であれば換価され、手許に残すことはできません。

自動車が会社の経営者自身の所有であり、ローンが残っている場合、ローン会社に返還しなければなりません。

又、会社の経営者が自己破産する場合、その自動車が高額なものではなく、自由財産の範囲内であれば残すことが可能になります。

さらに、高額なものであっても、適正価格で家族が破産管財人から買取り、これを家族から借りて使用することも可能です。

自分は高齢者ですが年金はもらえますか。

年金は自己破産の申立て前は差押えのすることのできない財産として、又、破産決定後も「新得財産」として自由に使うことができますのでご安心下さい。

厚生年金を受給し、これを生活の糧とし、人生の再スタートをしている元会社経営者の方々は多数おります。

負債の返済に苦しんで会社経営を続けるより、借家に住み、厚生年金で穏やかな生活をする方が人間的だと思いますので、会社の自己破産の申立てをすることもベターな選択だといえるでしょう。

自分以外の家族の財産はどうなりますか。

会社及び会社経営者が自己破産しても、妻や子供たちの家族が連帯保証人や物上保証人になっていない限り、家族の財産が会社の債権者により取立てられることはありません。

会社の債権者の中には、会社や会社経営者の代わりに支払って欲しいと言ってくる者がたまに見かけられますが、拒否すればよいでしょう。

会社の破産以後、仕事をしてもよいですか。

勿論、会社経営者が仕事をすることに何らの支障がありません。人生の再スタートには生活費が必要ですので、仕事に就き生活費を稼ぐ必要があります。

真面目に会社の経営をしていれば、同業者から就職を望まれることもあります。

新たな起業はすぐに出来ないとしても、一労働者になって働くことは可能で、そのような会社経営者は多数います。

そして、こつこつと仕事をし、お金を貯めて再び自宅を所有することができたという会社経営者も少なからずいます。

会社を潰してしまったという自責の念は持つ必要はありませんので、仕事を通じ、社会貢献ができたとの誇りを有し、毎日の生活を送ることが何よりも大事です。

会社の従業員に対してどのように対処したらよいですか。

長年、会社のために働いてくれた従業員のことを考えると、会社経営者も頭を痛めることと思います。

会社が自己破産の申立てをすることになると、従業員に対しても解雇の通知をしなければなりません。

1か月前の解雇予告に対しては予告手当が必要ではありませんが、即日解雇には賃金1か月の予告手当が必要となります。

いずれにしましても、賃金の不払いは労働基準法上の罪ということになりますので、優先してその支払いを確保する必要があります。

又、従業員の生活確保のため、場合によったら再就職先を斡旋する必要も出てくるかと思います。

その他、雇用保険の受給方法を説明し、速やかに離職票を交付しなければなりません。

残念ながら賃金や退職金の支払いができない場合には、賃金支払い等確保法による国の未払賃金立替支払制度の説明をする必要があるでしょう。

破産手続開始申立日等の6か月前の日から2年の間に退職したことが要件になっていますので注意が必要です。

なお、立替払額は未払賃金総額に8割を乗じた額ですので、全額が支払われないということを従業員に伝える必要があります。

何よりも誠意をもって従業員に対処し、いくらかでも従業員の今後の生活が安定するよう最大限の努力をする必要があります。

会社の破産や自分の破産が第三者に知られますか。

自己破産決定があった場合、会社名や氏名が官報に公告されるので、誰もが破産の事実を知りうる状態になりますが、官報を見る人はほとんどいませんので、第三者にはあまり知られることはないと思います。

会社は破産手続の終了によって消滅し、会社登記簿も閉鎖されることになります。

又、会社の経営者の破産も、ほぼ100%免責を得られますので、仮に第三者に破産の事実が知れたとしても、それによる不利益は全くありません。

免責がなされれば復権しますし、意欲があれば会社を起業することも可能となります。

会社の経営継続が不可能となっていますが、会社に何もお金がありません。

会社の破産や経営者自身の破産の申立てをする場合、裁判所に対する予納金の支払いが必要になります。

この金額は債務額、債権者により変りますが、いずれにしても、かなりのお金が必要となります。

予納金が用意できないことによって会社の破産申立てができず、そのままの状態になり、いつまでも会社の経営者が債権者から支払いを督促されているという例を知っています。

会社の経営がうまくいかない時には、まず弁護士に相談することがベターだと思います。

その場合、会社を破産させなくても民事再生手続を選択し、会社を存続させることも可能である場合があります。

経営が悪化しているにもかかわらず、預金や売掛金を支払いに回し、最後には会社が掛けていた保険等を取り崩し、いざ破産の申立てを選択しても、予納金の確保すらできない場合があります。

このような事態にならないよう、会社の経営者は普段から会社の経営状況に留意し、万が一、不測の事態が生じた場合に備え、破産に必要な必要資金を確保しなければなりません。

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